「製品値上げの依頼文書に何を書けば良いか分からない!」という方向けに、B to B製品の価格改定申し入れ文書のテンプレートと、書き方のポイント4つを解説します。
愛知県の価格転嫁サポート窓口、および民間コンサルティング支援においても、事業者様からこんな相談をよく頂きます。
「値上げの通知文書を出したいんだけど、何を書いたら良いでしょうか?」
ここ数年は飲食店やスーパーなど値上げラッシュですし、いわゆるB to Bの商材に関しても価格改定・値上げが一般化してきたと感じます。しかし、日本は長きにわたりデフレ経済が続いてきました。「取引開始してから20年くらい価格が変わっていない」「値上げ交渉なんてしたことがない」という事業者様も多くいらっしゃいます。文書に何を書いたら良いか分からない、という声も当然だと思います。今まで値上げなんてする必要がなかったのですから。
そこで、私が価格転嫁コンサルティングの相談の場で事業者様へテンプレートとしてご提示している「値上げ申し入れ文書」のフォーマットを、このブログでも公開します。
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値上げ申し入れ文書 書き方の4つのポイント
①あいさつ文は短く、値上げの意思と理由を明確に
時候の挨拶は「平素は格別のご高配を賜り……」といったWordのテンプレで十分です。いっそ堅苦しい挨拶文を省いて、「いつもお世話になっております。この度、価格改定を実施したく……」とすぐに本題に入っても構いません。
ここで重要なのは、「原価(材料費・労務費・経費のいずれか)が上がっていること」と、「値上げする意思があること」の2点を明確にすることです。この2点さえ伝わっていれば十分で、それ以外は不要。極力シンプルにすべきです。
よく見かけるのが、「値上げをお願いするのは心苦しい」という社長の気持ちを伝えるために、挨拶文だけで1ページ近く費やしている値上げ文書です。そういった社長の心情は理解できますが、長すぎる文章は読まれません。さっさと本題に入りましょう。
②値上げ金額・時期・対象製品は冒頭に記載する
「何を、いつから、いくら」値上げするのか——これがこの文書で読み手に伝えるべき最大のメッセージです。挨拶文の直下、文書の中央付近の最も目立つ場所に記載しましょう。
注意したいのが、「全商品、一律〇%アップ」という書き方です。これは極力避けてください。もし「同じような製品」を「同じ原材料・設備・作業者」で製造しているなら一律値上げでも理屈は通ります。しかし、多くの中小企業ではそうではないはずです。
例えばプレス加工であれば、素材は鉄・ステンレス・アルミとさまざまで、設備も単発プレス・順送プレス・トランスファープレスとトン数も異なります。原価条件がバラバラなのに一律で値上げを打ち出すと、実態を把握しているお客様から「便乗値上げだ」と不信感を持たれるリスクがあります。「製品Aは+〇%、製品Bは+△%」と製品ごとに値上げ幅を設定する方が、説得力が増します。
③値上げ額の算出根拠は掛け算・足し算でシンプルに
算出根拠は「掛け算」と「足し算」だけで表現するのが理想です。例えばこうです。
原材料:+10円 = +100円/kg(原材料値上げ)× 0.1kg(使用量) …A
労務費:+1円 = +70円/時(最低賃金の値上げ)× 50秒 ÷ 3,600秒 …B
合計:+11円 = A + B
これくらいシンプルに書けると、読み手にとって非常に分かりやすくなります。
なぜ「分かりやすさ」にこだわるかというと、価格改定の決裁者(購買部長・購買担当取締役など)は購買実務を担当しておらず、仕入れ先の製造工程をよく知らない場合がほとんどだからです。普段やり取りしている購買担当者は現場をよく理解していますが、その方には価格決定の権限がなく、上司の承認が必要という構造があります。
読んですぐ理解でき、何度も読み返さなくて済む——それくらいの分かりやすさを目指して文書を作りましょう。
④エビデンスは公的機関の公表データを使う
公正取引委員会の指針でも明記されていますが、価格転嫁においては「算出根拠(③)」と「エビデンス(証憑書類)」の提示がセットで重要です。この2つが適切に提示されていれば、お客様が交渉の場に着かなかったり、合理的な説明なしに価格を据え置いたりした場合、取引適正化法の禁止行為「買いたたき」に抵触する可能性があります。【※取引適正化法には資本金額・従業員数による対象要件がありますので、該当するか事前にご確認ください。】
エビデンスのポイントは2つです。
1つ目は「公表されたデータ」であること。労務費であれば各都道府県の最低賃金が代表例で、労働局のHPで誰でも確認できます。
2つ目は「客観性」があること。お客様が見ても、コストアップと値上げの合理性が理解できる内容であることが必要です。「原材料が上がっていて辛いので値上げしてください」という主観的な理由では、お客様も値上げを認めにくくなります。
価格転嫁はお客様の理解を得るのが難しい、根気のいる交渉です。お困りの方はお気軽にご相談ください。
