はじめに――NHKから取材依頼が来た
2026年4月3日、NHK「東海ドまんなか!」の特集番組に、中小企業診断士・経営コンサルタントとしてVTR出演しました。
テーマは「どうなる?私たちの給料」。愛知県内の中小企業における賃上げの現状を追ったドキュメントで、私が支援している(株)鍛冶儀商店(三重県・鉄鋼加工販売業)がNHKの取材を受けることになり、実際の支援場面も含めて撮影していただきました。
実はNHKへの出演はこれが初めてではなく、約1ヶ月前の夕方のニュースに続いて2回目でした。それでも夜の特集番組は規模が違い、改めて緊張感を覚えたのを記憶しています。
取材を通じて印象に残ったのは、画面越しに伝わる以上に深刻な、中小企業の賃上げの現実でした。
取材で見えた「賃上げできない」本当の理由
番組では複数の中小企業が取り上げられましたが、共通して浮かび上がったのが「賃上げしたくても、原資が作れない」という構造的な問題です。
金型メーカーの社長のコメントが象徴的でした。原材料費の高騰、中東情勢による原油高でコストは上がり続けている。にもかかわらず、取引先への値上げ交渉は進まない。相見積もりが常態化した業界では、価格を上げれば他社に仕事を取られるという恐怖感が先に立つ。
賃上げを難しくしているのは、価格転嫁ができないことだ——この言葉は、現場を支援するコンサルタントとして、深く共感するものでした。
番組で示されていましたが、帝国データバンクの統計によれば、価格転嫁率は42.1%。材料費と比べて特に人件費は転嫁しづらく、大企業との交渉力の格差がそのまま賃上げ格差につながっています。春闘で大企業が5.65%の賃上げを実現する一方、労働組合を持たない中小企業は0.96%にとどまっているのが現実です。
現場で感じたこと――原価の見える化が第一歩
(株)鍛冶儀商店は創業7代目、従業員12名の老舗鉄鋼加工販売業です。家族的な雰囲気の温かい会社ですが、経営の課題は明確でした。
仕入れは手書き帳簿で管理され、膨大なファイルが棚に並んでいます。過去に仕入れた商品のデータは一括集計ができないため、商品ごとの原材料費を適切に算出できない状態でした。価格転嫁を取引先に交渉しようにも、「いくらコストがかかっているか」を示す根拠が作れないのです。
私が最初に指摘したのもそこでした。
「製品単体を作るのにどの程度コストがかかるのかが、見える化できていないですね」
社長は「どんぶり勘定。見える化が今年の課題」と率直に答えてくれました。
価格転嫁の交渉は、感覚や慣習ではなく数字が根拠になって初めて成り立ちます。「これだけコストが上がっているから、これだけ値上げが必要です」と顧客へ説明できる状態を作ること——それが、賃上げへの道筋の第一歩です。
製造業であれば材料費、労務費などの製造原価、卸売業であれば商品の仕入れ原価など、大企業であれば当たり前にシステム化されており、即座に正しいデータを入手できることが一般化されています。この、価格転嫁の理由として必要な、個別製品原価のデータ化は、中小企業でも避けられないフェーズに来ています。デジタル化や見える化は「大企業のもの」ではなく、むしろ交渉力を持てない中小企業こそ必要な武器だと、現場を通じて強く感じました。
中小企業の社長に伝えたいこと
賃上げは「やりたいけどできない」という話ではありません。原価を把握し、価格転嫁の根拠を作り、取引先と交渉する——この流れを一つずつ整えることで、現実は変えられます。
取適法(2026年1月施行)により、価格交渉の場を設けることは発注側の義務となりました。法律の追い風はあります。しかし交渉の場を作るだけでは不十分で、根拠となる数字を持って臨めるかどうかが勝負です。
NHKの取材を通じて改めて感じたのは、現場の社長たちは問題の本質をよくわかっているということです。わかっていても、日々の業務に追われる中でなかなか手が回らない。そこに外部の視点と手が入ることで、動き出せるケースは少なくありません。
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